矯正治療はもとの状態にもどす、あるいはもとの状態に近づけるという医療ではなく、 新たな状態・より良い状態をつくりだします。
様々な装置を用いて、歯並びや咬み合わせだけでなく、口元や上下の顎のバランスを整えることにより、 審美的・機能的な改善を得るための治療です。
矯正治療の目的は、歯並びを整えて物が噛めるという機能をあたえることです。
機能的に良い状態になれば、見た目にも、審美的にも美しくなります。
凸凹の歯並びでは歯磨きが難しく、虫歯や歯周病を引き起こしやすい状態ですが、 適切な治療によって改善することで、いつまでも自分の歯を保つことも可能になります。
矯正期間中は自宅でのセルフクリーニングだけでは、虫歯、歯肉炎、歯周病のリスクが高くなります。
そのため定期的に虫歯のチェック、歯のクリーニング、PMTC等の予防をお勧めします。
キレイな歯並びとは?
(1)上顎の前歯が下顎の前歯3分の1から4分の1を覆ってる。(図1参照)
(2)上下の前歯の真ん中の線が一致している。 (図1参照)
(3)鼻と顎の先端を結ぶ線に唇が軽く接する。 (図2参照)
不正咬合(歯並び)の種類
叢生(そうせい) | |
でこぼこに生えた乱ぐい歯、犬歯が飛び出した八重歯のことを言います。顎に対して歯が大きい、または顎が小さすぎて歯がおさまらないことが原因です。 | |
上顎前突(じょうがくぜんとつ ) | |
上の歯が出っ張っているいわゆる出っ歯です。 | |
反対咬合(はんたいこうごう) | |
一般的には受け口と言われ、上下の咬み合わせが逆になっている状態。 | |
開咬(かいこう) | |
奥歯で咬んでも前歯は咬んでおらず、上手く咬めない、また口が閉じにくい状態 | |
空隙歯列(くうげきしれつ) | |
歯の間の隙間が大きいすきっ歯。 |
歯並びが悪いとどうなるの?
むし歯や歯ぐきの病気になりやすくなります
歯が重なっていると歯みがきがしにくく、かみ合っていない歯は汚れがたまりやすくなります。
食べ物がよくかめなくなります
胃や腸にふたんをかけ、全身に影響します。
特に成長期のお子さまには影響が大きくなります。
顔の形がゆがみます
左右が非対称になったり、特に上アゴまたは下アゴが出っぱることがあります。
発音がしにくくなります
人と話す時に消極的になったりします。
特に外国語の発音がうまくいかないことがあります。
心理面に影響します
口元を気にして消極的になったり、内向的になる傾向があります。
その他にも
前歯をぶつけやすい、アゴの関節や顔の筋肉を痛めやすい(顎関節症)、さし歯やその他の治療がしにくくなります。
矯正歯科治療に伴う一般的なリスクや副作用について
① 矯正歯科装置を付けた後しばらくは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2 週間で慣れてきます。
② 歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
③ 矯正歯科装置の使用状況、顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、矯正歯科治療には患者さんの協力が必要であり、それらが治療結果や治療期間に影響します。
④ 治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。
したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
また、歯が動くと隠れていたむし歯があることが判明することもあります。
⑤ 歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。
⑥ ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことがあります。
⑦ ごくまれに歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。
⑧ 矯正歯科装置などにより金属等のアレルギー症状が出ることがあります。
⑨ 治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることがあります。
⑩ 治療の経過によっては当初予定していた治療計画を変更する可能性があります。
⑪ 歯の形の修正や咬み合わせの微調整を行う可能性があります。
⑫ 矯正歯科装置を誤飲する可能性があります。
⑬ 矯正歯科装置を外す際にエナメル質に微小な亀裂が入る可能性や、かぶせ物(補綴物)の一部が破損する可能性があります。
⑭ 動的治療が終了し装置が外れた後に現在の咬み合わせに合った状態のかぶせ物(補綴物)やむし歯の治療(修復物)などをやりなおす必要性が生じる可能性があります。
⑮ 動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。
⑯ あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性があります。
⑰ 治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性があります。また、加齢や歯周病などにより歯並びや咬み合せが変化することがあります。
⑱ 矯正歯科治療は一度始めると元の状態に戻すことは難しくなります。
治療期間と通院回数
小児の治療
治療期間 1年から1年6ヶ月 通院回数12回から18回
成人の治療
治療期間 2年~3年 通院回数24回から36回